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小説『万能鑑定士Qの事件簿 ⅠⅡ』 感想

万能鑑定士Qの事件簿 I (角川文庫)

松岡 圭祐 / 角川書店(角川グループパブリッシング)



角川は現在従来のライトノベル読者層よりも少し年上の大学生以上のラノベファン層+元ラノベファンをターゲットにしたマーケティング戦略をしていると思われる。(角川文庫レーベルでは心霊探偵八雲シリーズ、角川ホラー文庫レーベルだと死相学探偵シリーズ等。主人公が中高生では無く、大学生以上なのが特徴。)

この作品シリーズに関しても、そうした意図で企画された物だろう。キャライラストを押し出した表紙など、装丁面からもそうした意図は汲める。

まず、結論から言おう。個人的にこの作品は余り面白く無かった。もう少し言うならば、どうしても好きになれない。松岡圭佑氏の作家性とこの企画の相性がⅠ、Ⅱを読む限りはどうしても良いとは思えないのだ。

・違和感
まず致命的な点を上げるならばヒロインのキャラに関してだ。異常に専門知識が豊富なのに、俗っぽい知識が無かったり、超人過ぎる自分の才能に無自覚でそれに絡めたボケをかます。これは、ラノベの主人公には割とよくある設定だ。が、それはあくまで男性が主人公の場合である。読者が自己投影する対象であるから許される設定であり、ボケというか鈍感要素はあくまで超人すぎる故の嫌味を消すための薬味みたいな物である。

そしてラノベにおける男主人公は、所謂キャラ萌えの対象では無いという点も考えないといけない。男主人公だから許されているのだ。この作品の場合、主人公がメインヒロインなのにこの調子なので、全く萌えようが無いヒロインというラノベにおいては粗大ゴミ的な異物と化している。

これは偏見かもしれないが、ラノベ(BL系除く)における女性キャラというものは、一般的にはいくら超人的な能力を持っていても性格に難ありで男性主人公に頼らざるを得ないというような属性を持っている。しかし、今作のヒロインの場合は、その内面がトンデモなく超人的というか出来過ぎた人物なのだ。もちろん容姿も端麗である。一種の聖人君子に近い。このヒロイン像とラノベ的作風の食い合せが悪く違和感に感じるのだ。

・作家性
企画との相性はあまり良くないが、松岡圭佑氏の作家性を考えると、この聖人君子的なヒロインというのはある種の必然とも言える。というのは、氏の千里眼シリーズ(クラシック、及び新シリーズ)を読めば分かるのだが、あちらのヒロインも全く同じ性質を持っている。完全無欠の聖人君子器質だ。特に新シリーズでは、主人公のその性質がエスカレートした故にキャラを持て余し気味になってきている感すらある。
その点も踏まえて考えると、こう言ってはなんだが企画段階で無理があったのでは無いだろうかという話だ。氏の作家性がラノベ向きでは無いのではという話だ。(小説家としての氏の能力に関しては疑う点は無く、小学館時代からの大ファンである。)

また、ストーリーの規模故に超人化しすぎる主人公はともかく、作中の登場人物に所謂キャラっぽさが薄いという点もラノベとの適正を考えると、問題では無いだろうかと感じる。氏は、心理学をテーマにした作品をこれまで多く書いてきたこともあり、どうしても作中の人物像にラノベ的では無い厚みがあるのだ。この作家性が、逆に漫画のようなキャラ的人格を描くのを苦手にしているのではと推測する。今作の場合、無理に慣れないラノベ寄りにしているせいで、ぎこちない印象が目立つ。

また、今作以前の氏の作家性を省みるなら、今作ではストーリーのレベルが明らかに下げられているのが分かる。これによって馬鹿みたいに読み易いのは否定はしないが、まぁ馬鹿みたいなのだ・・・幼稚というか。ラノベっぽくするというを誤解しているのでは無いだろうか。

・企画に関して
氏が企画に合わせてラノベ寄りの新しい作風を開拓しているのは分かる。が、どう考えても担当がそうじゃないよとツッコミを入れるべきでは無かったのだろうか。例えば、講談社レーベルの京極夏彦や森博嗣なんかはキャラ小説ではあるけれども、ストーリーは濃いという、大学生向けラノベとしての成功例を体現しているように思える。担当者は、ラノベを見せてこんな感じにと注文するよりも、そうした成功例をみせて注文すべきでは無かったのだろうか。内情がどうなってたのかは知らないので憶測ではあるが。

・さらなる違和感
加えて、内容的な話になるが、今作はやたらと角川のアニメキャラや、関連のネタ、さらには角川出版そのものまで登場する。が、それらの角川ネタの殆どが何の脈絡も必然性も無いのでノイズでしか無い。作者の角川への移籍後一発目の新シリーズ故に余計にこれらのノイズも読者に向けた物というよりも、内輪ネタの角川ヨイショにしか感じないのだ。この点に関しては、違和感というよりも嫌悪感すら覚えてしまう。

・ここが変だよ
せめて、主人公たちを社会人として設定するのであれば、読者層も社会人に近い年齢と想定してストーリーのレベルはもう少し上げるべきだろう。ストーリーの簡易性(読みさすさ)は維持したいというなら、主人公たちを大学生にするという逆アプローチでも良いが。

キャラに関してはラノベでこの女主人公のキャラは無いので、いっその事男にしてしまうというのはどうだったのだろうか。前述の通り、男性キャラであれば聖人君子キャラも割とよくいるし、ラノベとの相性も良い。

・結論
作者の千里眼シリーズの大ファンである身としては、上記を踏まえて大学生層向けのラノベ寄り新シリーズとしては、主人公を男に改変した千里眼シリーズのラノベ風リメイクで良かったんじゃないのかと思ってしまう。心理学ネタあり、軍事ネタあり、SF要素あり、アクションありで、あとは作中の男性キャラをラノベ的な美少女キャラに置換して投入するだけで十分通用するじゃないですか!!と。失礼ながら、リブートの千里眼新シリーズの迷走っぷりを見ると尚更そう感じてしまう。

そして角川の編集部はもう少し仕事をして欲しい。そして小賢しい分冊商法はマジでやめろ。以上。


※2013/08/14 追記&文章整理。

関連記事:『万能鑑定士Q』の感想の感想
関連記事:松岡圭佑『人造人間キカイダーThe Novel』 感想
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by trial-6 | 2010-06-27 00:15 | 作品・感想

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